Fantasyland読了

 

Fantasyland: How America Went Haywire: A 500-Year History

Fantasyland: How America Went Haywire: A 500-Year History

 

 ファンタジーランドをしばらく前に読み終わって、内容について考えている。

 

アメリカが本格的に道を踏み外し始めたのは、と考えて、時を遡っていくとニューエイジに突きあたる。だが、ニューエイジを検証すると、もっと前から続いていることがあって、探っているうちに清教徒バージニア植民地にたどり着いてしまった。ではここから始めようというのが、この本だ。

 私は全然情報アップデートが出来ていない日本の「サヨクな」シニアに多大な影響を及ぼした反文明社会思想、また最近のママたちを惑わせている自然志向、そしてますますインチキ臭くなっていく、キラキラ・スピリチュアリズム代替医療の発生源を探していたら、1960年代を通り越して、独立戦争後まで行ってしまったので、この本とほぼ同じような歴史の流れについてあれこれ読んできた。

 

だから知っていることも多かったのだけど、キーになっているのは「ファンタジー・エンタメ業界複合体」という概念。これがすごい。

 

最初は、教会で聖霊に満たされた宗教体験をしたというあたりから始まって、宗教体験がブームになる。全身で聖霊を感じて倒れた。自分は生まれ変わったと感じて宣教師になったりする。宣教師の熱の入った野外説教に数万人が集まって、「自分も聖霊を感じる」と倒れる人が続出する。このあたりから、宗教はエンタメと区別がつかなくなってくる。巡回サーカスやインチキ薬売りが開く見世物ショーと同じような感じになっていく。町外れに立てられたテントで説教を聞いて、宗教体験をしたら病気が治った。奇跡だと叫ぶ光景を映画などで見たことがないだろうか。人気説教師だとだんだん群衆が増えて、プロレス会場や野球場が会場になって、それをテレビ中継したりもする。アメリカでケーブルテレビの多チャンネルを回していくと、スポーツの次にテレビ説教師がでてきたりする。さらに激しい宗教体験が人気を呼ぶ。

プロレスやプロスポーツも同じようなレベルのエンタメ化していく。サッカーをやらない人が一日中サッカーを見て、ゲームで自分のチームを作って監督気分を味わう。

 

南北戦争の模擬戦の兵士役を演じようと集まってくる人たち。歴史的建物を再現した野外ミュージアム人気。チェーンレストランがディズニーランドの中にあるように「丸太小屋風」「農場納屋風」「漁師小屋風」などノスタルジーファンタジー化していく。都市の再開発では、歴史的景観を再現するのが人気を呼ぶ、全米がディズニーランド化する。

トイザらスの歌そのままにずっと子どもでいたいとおもちゃを大人買いして遊ぶ大人たち。現実もファンタジー化して消費され、生々しい現実がどこにもなくなる。

 

自分が楽しいと感じるものが正しい、他人が信じるものにはケチはつけない。遊んでいるのだから批判は野暮、もっと楽しいことを体験したいとエンタメ依存が深まる。

 

しかめっ面をした常識的な大人を追い出してしまって、ずっと遊んでいたい大人子どもの世界。

 

もちろんこれだけではなくて、他の考察も盛りだくさんなのだけど、日本で太鼓叩いてデモしている人たちの姿も重なってくる。邪悪な政府権力に反対していると言うのを免罪符にしていてもエンタメ・イベント化している抗議行動。

 

そういうのに反発を覚えている人たちも(私を含めて)2.次元、2.5次元やゲームの世界で遊ぶのが好きという点では、何でもエンタメ・イベント化しちゃう人たちと本質は変わらない。

 

せめて、自分が信じているから正しいのではなく、何を信じていようと現実は現実であって、太陽は東から昇るということを肝に銘じて、「わくわくする、面白ーい」を判断基準にしないようにしたい。