読了 『アルコール依存症治療革命』

 

sayakanakai.hatenablog.com

 読み終わりました。

有用な情報が多いので、治療者じゃなくても、当事者でも家族でもない第三者の立場で依存症の人と接する人にはお勧め。

依存症であることが周囲とのトラブルを起こすのは道徳的にアウトなことをしてしまうから。すると、家族、治療者を含めて周囲は断酒させることに集中してしまう。断酒できないと責めてしまう。だけど、依存症になるのは、孤独で人に頼れないからなので、周囲に責められて良くなるはずがない。アンケートを取ってみると、断酒が続いている人でも家族との関係は良くなっていない。「酒さえやめれば」じゃないのだ。酒はやめなくても人と一緒にいること、人に心の内を明かして他人が好きになることを覚えると、酒に逃げなくなると著者はいう。

 もちろん、依存症の人の心の孤独さを埋める課程は素人には手に負えないから、家族や友人の立場では手を出さないほうが良いわけで、治療者に任せていいのだろうけど、突き放したほうが良いという「底付きメソッド」がもう古いことは知っておいたほうが良いだろう。

ネットなどではポピュラー心理学(通俗心理学)の影響などもあってか「直面しろ」という意見を目にすることも多い。

代替療法などでもそうなのだが、一般受けする医学はだいたい古い。

直面化的アプローチも古いのだ。「人格を再構築するために人格を打ちのめすことが必要」という「底をつき完全に降参する」プロセスへと追い込むのは危険だ。この手法を自己啓発セミナーなどが多用していることからも想像がつく。

 

依存症になりやすい人は

1.自己評価が低く自分に自信が持てない

2.人を信じられない

3.本音を言えない

4.見捨てられる不安が強い

5.孤独でさみしい

6.自分を大切にできない

問題を抱えているという。

だから孤独なのに人と一緒にいると苦しくなって、それを紛らわせたいので酒に逃げる。酒がなくても安心できる人間関係がある場所ができると好転していく

自助グループが回復のキーなのはそのため)

だから、信頼できる人になれるはずの友人が叱責したり、絶縁を宣言したりするのは逆効果なのだ。

でも対等の関係にある友人だと、依存症の人の行動に傷ついてしまうだろうから、このあたりはプロに任せて係らないのがいいのだろう。

 

また著者はアルコール依存症という名称をやめて「アルコール使用障害」にする時期なのだという。そして肝臓の数値が悪いぐらいの、まだ大丈夫なレベルから対応を始めようという。

 

懲罰大好きで、弱者を見つけてコントロールしたい弱者依存が多い日本で、これが一般化すれば、社会全体のメンタルヘルスも向上するだろうなと、祈る気持ちでページを閉じた。

ネットで問題を論じるのが好きな人にはとにかくお勧め。