狂暴な緑

久しぶりに外に出るようになって、初夏をちょっとすぎた木々の緑にちょっと衝撃を受けた。深い緑色になった葉がまだ若いままの瑞々しい艶と張りで白い夏の日差しを反射している。川風に揺れてその光がぎらぎらと乱反射している。人生の後半に差し掛かった人間は太刀打ちできない生命エネルギーが暴れまくっている。

 

日本列島は温帯に位置しているが、南国の熱を運ぶ黒潮に洗われ、モンスーンが初夏と初秋2回雨を降らせ、さらに繰り返し襲ってくる台風は、熱帯の海の熱と湿気を運んでくる。海続きの熱帯との間には妨げとなるものもなく、ふんだんな水と熱を受け取って植物はややもすると豊かすぎる植生を作っている。

 

むき出しの土もあっという間に緑が覆う。すぐに松などの陽樹が芽生え、人間の短い一生の間にも草原は低木の藪へと変わっていく。植物の生命力の前に人間はなすすべもない。この列島では自然が勝つと決まっている。負けるのはいつも人間の方なのだ。

 

人が作り出して植えた桜でさえ、これほどまでに強く狂暴な緑を見せるのだ。間もなくやってくる梅雨に打たれて、葉はさらに大きく、硬くなり、セミが鳴きはじめるころには風に鳴る葉連れの音も張り詰めた硬質の調べとなる。艶やかな葉は白い夏の光をさらに眩く反射するようになるだろう。

 

そんな狂暴な緑に圧倒されて早々に室内へと逃げ込んだのだった。