ああ、すれ違い

前回、髪を切ったときに、ゴールデンウィーク明けには来てくださいねと言われたのに、結局行かなかった。梅雨明けも近くなって、まだ明けてもいないのに猛暑の日々になって、これは放置できないとさすがの私も思うぐらいのもしゃもしゃの襟足になってしまって、えいやっと予約を入れて、美容院へ。

 駅前でちょっと遠いのだが、ようやく私の髪のクセを把握してくれる美容師さんがいて、店内に段差がない店を見つけたのだ。ここに至るまで、美容院ジプシーだったので、かなり嬉しい。身体障害者になってから、とにかく、初めての場所が苦手になってしまったのだが、それでもあちこち行ってしまっていたぐらい、美容院探しは難しい。

 

ということで、髪もさっぱり短くなって、気分が良いし、あんまり暑いから、ファミレスで冷たいものでも食べようかなと窓から覗いてみたが、やっぱり暑すぎるので、帰ろうと帰って来ちゃったのだった。派手に宣伝ポスターでもあったら、入っていたかもしれないが、「糖質控えようね」という主治医の顔もちらっと浮かんだ。

 

明けて翌日、午前中リハビリを終えて、思いついて、最近通う日がずれて会えなくなったリハビリ友に電話をした。彼女の方が少し年上だが、若手片麻痺仲間の一人で、数少ないご近所の友達の一人だ。

 

「ねえ、昨日、2時過ぎに駅前にいなかった?」といきなり聞かれた。

「え、いたけど」

「私ねえ、用事が終わって娘とファミレスでお茶してたんで、ナカイさんかと思ったんだけど、髪がすっきりショートだったんで人違いかなあと思って」

「うわー、入れば良かった!」

「やっぱりそうだった? 声かければ良かった」

と、すれ違い劇を演じてしまったおばさんたちは、残念残念と、再開を約束したのだった。だが車椅子ユーザー同士、これがなかなか難しくて、返す返すも惜しいことをしてしまったのであった。